くまんち

なんてことない、日々のこと

ギザギザハート

「ねぇ!ネクタイないんだけど!!」

登校する直前になって娘が大騒ぎ。

「いつもテキトーにハンガーにかけるからじゃん。落ちてない?」
「ないから聞いてんだけど!!」
全身でイライラしているけれど、知らないものは知らない。
「そこにないなら、学校じゃ?」
「付けずに帰ってくるほどバカじゃない!」
「いやいや、金曜は体育だったから〜って、体操服で帰ってきたよ?」
あ…という顔をしてしばらく考えた後
「いや…制服しか持って帰らないとかありえんし。荷物まとめるときに確認した」
「うーん、家では見てないなぁー」
 
あー、もう!!と地団駄しているが、心当たりをひっくり返して見つからないのなら“ない”のだ。
「他の子が間違えて持って帰ってるかもよ?机の下に落ちてるのを自分のだと思って持って帰ったとかさ」
「人の机の下に私のがふぁーて飛んでって、その子がうっかり持って帰るって?どんなミラクルよ。ありえんし!あーもう!ありえん!!さいあく!!」
職員室で(ネクタイを)借りるの?恥ずかしすぎるんですけど…なんで?なんでないん?
ブツブツ言いながら息子の登園グッズ置き場も漁る。
「ちび太はネクタイをおもちゃにしたりなんかしてなかったよ。とりあえずもう行きな、友だち待ってるよ?」
「あーーーもう!わかっとるわ!!うるっさい!もう!朝からさいあく!やだ!もぉ〜やだ!!うわーーん」
乱暴に玄関を開けて泣きながら飛び出して行った。
「ハンカチ持ってるー?」
閉まりかけた玄関をわざわざ開けて確認する私に
「持っとるわー!!うっさい!!」

失敗した。判断ミス。
朝から近所迷惑も甚だしい。
ご近所のみなさん、叫ばせてしまってごめんなさい。
だって…あんなに泣いて、ハンカチを忘れていたら辛すぎると思って…つい。外で叫ばせてしまった。

それにしたって、キレすぎじゃないか。
悪いの、自分やん。
だからキレてるのか。
なんだよ、朝から…

手当たり次第に引っ張り出されひっくり返された部屋を片付けながら、もやもや…

息子の朝ごはんの支度をしながらもやもや〜…ふと思い出した。娘のイヤイヤ期。
よく魔の2歳なんて言われるが、私は娘のイヤイヤ期も息子のイヤイヤ期も案外好きだった。
自分の持てる限りの言葉を尽くして
「やだ!なんで!ちあう(違う)!もう、おたーたん、プン!あっちいって!もーしらない!プン!」と懸命に主張してるさまがかわいかった。(プン!て口に出して怒る子、初めて見たよ…かわいいかよ、と本人がやめるまで言わせていた)
悪態を吐こうにも「プン!!」くらいの語彙しかなかった娘。
「あっちいって」と「もーしらない」が彼女の中で一番強い“ひどい言葉”だったあの頃

今朝だって、あんなにキレ散らかしていても私に向けた悪態は「うるさい」だけだったな…
まぁ、うるさいよね。
お母さんが言うことなんてわかってるもんね。

三つ子の魂じゃん。かわいいやつめ。
 
 
そう思えた自分自身にも少しほっとした朝。
 
 

 

ギザギザハート

「ねぇ!ネクタイないんだけど!!」

登校する直前になって娘が大騒ぎ。

「いつもテキトーにハンガーにかけるからじゃん。落ちてない?」
「ないから聞いてんだけど!!」
全身でイライラしているけれど、知らないものは知らない。
「そこにないなら、学校じゃ?」
「付けずに帰ってくるほどバカじゃない!」
「いやいや、金曜は体育だったから〜って、体操服で帰ってきたよ?」
あ…という顔をしてしばらく考えた後
「いや…制服しか持って帰らないとかありえんし。荷物まとめるときに確認した」
「うーん、家では見てないなぁー」
 
あー、もう!!と地団駄しているが、心当たりをひっくり返して見つからないのなら“ない”のだ。
「他の子が間違えて持って帰ってるかもよ?机の下に落ちてるのを自分のだと思って持って帰ったとかさ」
「人の机の下に私のがふぁーて飛んでって、その子がうっかり持って帰るって?どんなミラクルよ。ありえんし!あーもう!ありえん!!さいあく!!」
職員室で(ネクタイを)借りるの?恥ずかしすぎるんですけど…なんで?なんでないん?
ブツブツ言いながら息子の登園グッズ置き場も漁る。
「ちび太はネクタイをおもちゃにしたりなんかしてなかったよ。とりあえずもう行きな、友だち待ってるよ?」
「あーーーもう!わかっとるわ!!うるっさい!もう!朝からさいあく!やだ!もぉ〜やだ!!うわーーん」
乱暴に玄関を開けて泣きながら飛び出して行った。
「ハンカチ持ってるー?」
閉まりかけた玄関をわざわざ開けて確認する私に
「持っとるわー!!うっさい!!」

失敗した。判断ミス。
朝から近所迷惑も甚だしい。
ご近所のみなさん、叫ばせてしまってごめんなさい。
だって…あんなに泣いて、ハンカチを忘れていたら辛すぎると思って…つい。外で叫ばせてしまった。

それにしたって、キレすぎじゃないか。
悪いの、自分やん。
だからキレてるのか。
なんだよ、朝から…

手当たり次第に引っ張り出されひっくり返された部屋を片付けながら、もやもや…

息子の朝ごはんの支度をしながらもやもや〜…ふと思い出した。娘のイヤイヤ期。
よく魔の2歳なんて言われるが、私は娘のイヤイヤ期も息子のイヤイヤ期も案外好きだった。
自分の持てる限りの言葉を尽くして
「やだ!なんで!ちあう(違う)!もう、おたーたん、プン!あっちいって!もーしらない!プン!」と懸命に主張してるさまがかわいかった。(プン!て口に出して怒る子、初めて見たよ…かわいいかよ、と本人がやめるまで言わせていた)
悪態を吐こうにも「プン!!」くらいの語彙しかなかった娘。
「あっちいって」と「もーしらない」が彼女の中で一番強い“ひどい言葉”だったあの頃

今朝だって、あんなにキレ散らかしていても私に向けた悪態は「うるさい」だけだったな…
まぁ、うるさいよね。
お母さんが言うことなんてわかってるもんね。

三つ子の魂じゃん。かわいいやつめ。
 
 
そう思えた自分自身にも少しほっとした朝。
 
 

 

たけのこを巡るアレコレ

なんだか月一ペースになってしまっている。

 

書きたいことはいっぱいあったのだ。

たとえば、5月の終わりに人生初めてのたけのこ掘りに行ったこと!

朝露に湿った草を踏み締めて竹林に向かうその小道すら楽しかった。

青いツユクサ、まるまると大きなてんとうむし。子供の頃はありふれていたのに、今住んでいるところでは見かけない。

あぁ、そうだ。私が生まれ育ったところは山が近かったなぁ、などと思いながらはしゃぐ息子の背中を見ていた。

肝心のたけのこ掘りは思っていたよりもずっと重労働だった。

竹林の地面はふかふかしていた。湿り気を帯びた緑の匂い。掘りたてのたけのこの甘く青い匂い。街中では見かけないようなぷりぷりに大きなハエが掘りたてのたけのこに寄ってくる。

美味しそうな匂いだもんね、あっちへお行き。

脱サラしたママ友はこの竹林の一部を開拓してキャンプ場を運営するつもりなのだ。小さなカフェも併設するために勉強中だとか。

人生の新しいステージに向けて動く彼女を眩しく思う。私は、何に対しても尻込みしてしまう。

もらって帰ったたけのこをすぐに茹でる。

たけのこは掘られて時間が経つほどエグ味が出るのだとか。急げ、急げ!

大きなお鍋に1リットルの水と塩を小さじ2。

米糠がなくても灰汁を抜けるというレシピを初めて試す。

茹で時間は10分〜15分。本当に10分でいいの?て思いません?だってたけのこは米糠で数時間茹でて茹で汁に漬けたまま…って常識じゃ…

15分茹で竹串がスッと通るのを確認し、レシピ通り流水で洗う。大丈夫かしら、と味見。

しゃくり

お、大丈夫だ。塩気も感じない。これはいい。なんせ大量に茹でなくてはいけないのだ。

テンションが上がって掘りすぎてしまい、10本ももらってきてしまったのでご近所のママ友に2本ずつお裾分けしても、まだ多い。

次から次へと皮を剥き、湯を沸かし、茹でては洗いタッパーに詰めていく。

「なんか工場みたいでいいわー」

皮むき担当の娘が笑う。

「お母さんもそう思ってたとこー」

全部のたけのこを処理し終えると、たけのこの皮だけで大きなゴミ袋がいっぱいになった。たけのこ工場はこれにて終了。

「また、来年もたけのこ掘りさせてもらえたらさ、私が皮むきするね。皮むき、気持ちいい」

わかる。たけのこの甘く青い匂い。

慌ただしいけれど、季節と生きている感。良い。

 

もちろん、この後たけのこの天ぷらにたけのこご飯に若竹煮。たけのこ三昧を楽しんだのだけど、、

 

これを書いて投稿しようとした夜、娘がマダニに噛まれていたのが発覚。翌日、息子の体にもぶら下がるマダニを発見。

娘はともかくも、息子は一緒にお風呂に入り、全身を洗ってやっていたのは私だ。なぜ見つけられなかったのか、割と念入りに洗ったはずなのに、と悔いても悔いてもしょうがない。息子のマダニを見つけたタイミングはちょうど通常診療が終わる頃だったので結局夜間救急で取ってもらった。

「口吻まできちんと取れていることを確認しました。念のため、6日から2週間ほどは異変がないか気をつけてください。熱が出るとか、発疹が出るとか何かあればマダニに噛まれたことを申告して血液検査のできるところへ。予防策がないので気づいたら早めに対処するという形になります」

なんの症状も出ない人が大半ですから、と不安気な顔をしていただろう私に笑いかける。

「うちの病院だと…年に一人くらいかな?亡くなるのは」にっこり。

それは余計な一言ですわ。

 

さーて、伝わるだろうか?

もうこの辺りから何を主軸に書いていいのかわからなくなったのだ。

たけのこ掘りを通して季節を感じた幸福感を書きたかったのに、下書きに保存して「公開前に一度見直そうっと♪」としたばかりに、すっかりそんな気分でなくなってしまった。

息子の内腿にぶら下がるマダニの姿が脳裏にチラつく。娘も息子も…虫除けスプレーも長靴も、ちゃんと対策してたつもりだったのにな。

 

ようやく不安な2週間が明けた。

 

娘も息子も、たけのこご飯うまーーと食べて、ゲラゲラ笑いながら元気に過ごしている。来年もたけのこ掘りに行けるようなら行きたいそうだ。

くよくよしがちな私からよくもまぁ、カラッと明るい子たちが生まれてきたものだ。

虫除けスプレーはしつこいぐらいにしようね!

楽しいことを心から楽しめるように

準備は念入りに!

 

 

新しい春

春休みが終わる前に、と息子のお友だち家族とお花見ピクニックに行ってきた。

「小さい子ばかりで公園…お姉ちゃん、大丈夫ですか?」とお友だちママさんに心配されたけれど、心配御無用とばかりにアスレチックのてっぺんで全力花見をしているのが今度中学2年生になる娘である。

幼稚園児と同じ目線で楽しめる、“ワクワクが原動力”なところがうちの娘の良いところ。

(け、決して幼いわけでは……)

 

中学に入学してから、ブログに娘のことを書くことが減ったように思う。

というのも、娘の成長を感じる場面が「家族」間から「友人」間に少しずつ変わってきたと感じるからだ。

私の目に映る子どもたちの様子を綴って公開するのと、娘から聞いた話を通して感じたことを公開するのとでは似ているようで大きく違う、と思う。

ザ・思春期!…というようなわかりやすさはないけれど、少しずつ娘と私の距離感は変わってきているように思う。

喜びも悲しみも、彼女の心が大きく揺れてキラキラ成長する瞬間は家族との時間よりも友だちとの輪の中になった。部活でも教室でも、そんな風に一緒に笑って成長できる友だちに恵まれたようで、ほっとしている。

明るい光の中で、青春を青春とも思わずまっしぐらに駆け抜ける姿は頼もしく、嬉しい。

そして、こうやって巣立っていくんだなと思う瞬間だけ、ほんの少し、淋しい。

いやいや、淋しいなんて気持ちはほんの一瞬なんですけどね。

 

今日から始業式。

幼稚園児と変わらないくらい無邪気な娘にも「後輩」ができる。

去年の今頃「ぽひー」と頼りない音を出して照れ笑いしていたクラリネットも上達し、今年は部活勧誘にワクワクしているようだ。

「部活見学の一年生が教室に入ってくるたびにファミマの自動ドアの音を再現しようね、てクラ仲間と話してるの♪」

 

なんじゃそりゃ。

 

ワクワクを原動力に、Go!Go!娘!!

 

優しさに触れる

園バスから降りた息子と家へ向かう帰り道。

車が一台しか通れない路地沿いのお家から車が出ようとしていた。いつものように、そっと端に寄り、やり過ごす。

「あら、ごめんね。待たせるね」

客人が安全に車を出せるよう道に出てきたおばあちゃんが言った。

いえいえ、と息子と手を繋ぎ待つ。

「気をつけて帰るのよ、ね」

「また来るから、元気にね」

娘さんかしら、60代くらいの女性がこちらに気づき運転席からありがとうと会釈してくれた。

車を見送り帰ろうとすると

「お花、あげようか」と家人のおばあちゃん。

「ハサミとってくるから、待ってて」

おばあちゃんの背中を見送りながら息子と顔を見合わせる。

「お花くれるって」

「やさしい!」

「うん、優しいね」

そこは椿やサザンカがたくさん植えてあるお家。毎日通る道なものだからわざわざ観察するわけではないけれど、庭には畑と井戸があるな、ポンプ式だな。水仙が咲いたな、春だな…なんて、通るたびに思っていた。

ハサミを持って戻ってきたおばあちゃんが椿(サザンカかも?)の花を切ってくれる。

「虫がついとるかもしれんから、手袋していろてね(触ってね)かぶれるけん」

パチン。

「前に病院の先生のとこにあげたら、ちゃんと手袋してねって言ったのに素手でして、ひどくかぶれたって。もう持ってくるなーて怒られたよ」

笑いながら、パチン、パチンと切ってくれる。

一枝くらいのつもりだったから、慌てていると「いろいろ植えてるから、持ってって」と庭を歩き回りながら切ってくれた。

一重、八重、色もまだらなものもあり綺麗。

お花がお好きなんだろうな、と思っていると

「お花はええね、余計なことはなんもいわない」と笑った。

「あのね、これ、新芽。これがある枝、付けとくから土に挿してみて。葉っぱはね、呼吸するから2枚くらい残して、このくらい…ね?増えるから」

挿木の仕方も教えてもらう。

「あ!手袋忘れんとってよ!」

「ありがとー!!」と息子と一緒にお礼を言って帰ってきた。

花束をいただくなんていつぶりだろう。

 

私は善意を受け取ることに怖気てしまう。

嬉しい!という気持ちと同時に、申し訳ない!と思ってしまうのだ。

『こんな良くしてもらう資格がない』だとか『このありがたさに見合うお礼って…?』だとかアレコレ考えてしまう、そんな喜びを伝える瞬発力のなさが相手の善意に対してひどく失礼な行為のように思われて悲しくなる。相手は見返りなんて気持ちではないだろうに。

軽やかに受け取れないのは、軽やかに差し出せないからかもしれない。

みみっちぃな、私

「花はええね」というおばあちゃんの言葉を反芻する。

 

椿の花束は重い。枝だものね。

 

早速、と手袋をして取り掛かる。親戚の形見分けでいただいた花瓶がようやく華やいだ。やっぱり和のお花が似合う。

センスがない…

センスはないけれど、お花はきれい!

 

教えてもらった通り、挿木もしてみた。息子に手伝ってもらったら、どれがどの花の枝だかすっかりわからなくなってしまったけれど。

それはそれ、お楽しみということで。

 

うまく根付かせられるかな?

それもまた、お楽しみ。

 

自慢の息子

昨日久々に大失敗してしまった。

息子の参観日をすっかり忘れていたのだ。

気になっていた窓のくすみをきれいにしようと磨いていたところ、ママ友からLINEをもらい
「今日、参観ですけど来られない感じでしたか?」
と聞かれてやっと気づくという、本当に芯からすっかりさっぱり忘れていたのだ。

「忘れてました!ありがとう!!」と返信して慌てて準備。
ネーム札を握りしめ、出席シートに体温やら体調やらを走り書き。自分の名前欄に息子の名前を書きかけたものをぐちゃっと黒く塗りつぶして横に自分の名前を書いた。みっともないけれどそれどころではない。
既に授業が始まって8分経っている。

信号に止まるたびやきもきしながら、急いで幼稚園の事務室に駆け込む。
「すみません、参観なの、忘れてて!」
「ぁ…!もうすぐ終わっちゃうかもしれないけど…どうぞ!今日はすみれ組さん、きく組の教室です!」
お礼を早々に教室へ向かう。チラッと見た事務室の時計によると既に始まって15分…
スリッパなんて履いていられない。ぺたぺたと廊下を走る。
教室に入ると、ちょうど演奏の発表が終わり、みんなで輪になって、一年の振り返りをしようとしているところだった。子どもたちの後ろに保護者が並んでいる。
息子は教室の入り口の側で、息子の後ろには先生が立っていて「それでは、お子さんと一緒にこの一年のことを…」と話していた。
先生にお辞儀して、そっと息子の後ろに立つと息子よりも先に息子の隣に座っていたお友だちが「おそすぎだろ!」とつっこんだ。
息子はにこにこしながら振り返り
「お母さん、忘れてた?」
「忘れてた!本当にごめんね。ごめんね」
「ふふ、ぼくも忘れてたんだ。びっくりしたねー」
椅子越しにそっと息子を抱きしめる。

心臓がバクバクしている。

息子が私の腕を握り返す。
どんなに不安だっただろう。
情けない。
でも、それ以上に、心細い思いをしたはずなのに「ぼくも忘れてたんだ」と笑う息子の懐の深さに、こんなにも成長していたのかと感動してしまった。
この一年の成長なんかを発表する場だったので、自分の番が来た時に思わずこの感動を口走りそうになるのを飲み込んで「先生とすみれ組のお友だちみんなのおかげで、毎日楽しそうでした。ありがとうございました」と無難オブ無難なことを言うにとどめた。
感動している最中は言葉がうまくまとまらない。

参観が終わった後、LINEをくれたママ友が自分の子の側で発表していたから…と発表の動画を送ってくれた。
4つある動画の最初から順に見ていく。
息子は私が来ていないことに少し不安そうな顔をして首を伸ばして廊下を見ながら歌っていた。
2つ目の動画では、やれやれというように肩をすくめて、少し苦笑いしながら2曲目を歌っている。
3つ目の動画では、やっぱり首を伸ばして廊下を確認したあと、暗い表情で少し投げやりに、でもきちんとハーモニカを吹いていた。
4つ目の動画では真顔でハーモニカを吹きながら…吹き終えた後、ほんのちょっと目元をこする息子の姿があった。
私はこの日のために、家でもハーモニカの練習をしていた息子を知っている。
本当に、なんてひどい失敗をしてしまったのだろう。
悲しくて泣きたくなるのを堪えて、きちんと演奏した息子はなんて立派なんだろう。
こんなにがっかりしていたのに、一言も私を責めることなく「ぼくも忘れてたんだ」と笑ったのか、この子は。

我が子を誇らしく思う。

 

情けない、と凹む心が膨らむくらい息子の成長を感じた一日だった。

 

節分の日

今年の節分は気合いが違う。

昨年のコワレニコワレ故障だらけの流れを断たねばならぬ!

とはいっても、恵方巻きという名の手巻き寿司だし、家を建てて以来、豆を剥き出しで撒き散らすのを嫌う夫の意向から、我が家の豆まきは炒り大豆のテトラパックをそのまま雪合戦のように……とやれば当たると痛いので、娘が小学生の頃にダンボールで作った“口を開けた鬼の顔”に向けて「鬼は外!」とシュートする、という伝統とは程遠いスタイル。

いやいや、大事なのは気持ちだから。

 

はじめのうちは「絶対悪いヤツにつかれてるお母さんの鬼をやっつけよう!」と真剣な顔で言っていた子どもたちも鬼のお面をつけて口を開けた鬼の顔ボックスを持った私に豆(袋)を投げるうちにケラケラ笑いだす。

「鬼は〜そと!福は〜うち!」「ちゃんと口を狙え!」「福は内を外してるじゃん!」なんて、鬼役を変わるばんこ、親も子もなく大はしゃぎで投げ合った。

笑門来福

家族全員、ケラケラ笑いながら豆を撒いた我が家の今年は悪くないはずだ。

 

そういえば、私の実家では家族で各部屋に豆を撒き(剥き出しの)、玄関に向かって豆を撒いて鬼を追い出した後、一番家具の少ない寝室に集まって改めて豆蒔きをした。

母が少し高い台の上に乗り、私たち兄弟はそれぞれビニール袋を持って正座して母を囲んで待つ。

みんなが大人しく正座したのを確認すると、母が「福はうち〜」と炒り豆と、ピーナッツ、小分けの飴玉やアルファベットチョコのような小さなチョコ、マシュマロやらチロルチョコやら…とにかく小さめの個包装になっているものをわんさと空に放り投げるのだ。

パラパラパラと散るお菓子や豆を、きゃーーと我先に集める。とにかく数を集めたくて両手で掻き集める弟と好きな物を多めに拾いたい妹。私はたくさん拾いたいのはもちろんだけど「こんなとこから見つけたー!」と棚の隙間から豆やお菓子を見つけることが楽しかった。

2月はその一袋が各人のおやつ。今思えば、母は随分たくさん用意してくれていたなと思う。

当時、友だちのお家でも同じように節分に豆とお菓子を撒く(お家によっては小銭も)ようだったので長崎(佐世保?)の風習かと思っていたけれど実際はどうなのだろう?

お菓子撒きは夫が嫌がったので、我が家では鬼のお口に豆(テトラパック)シュート形式が定着したけれど、家族みんなでゲラゲラ笑いながら楽しく豆を撒くことは変わりない。

それぞれのお家にそれぞれの節分スタイルがあるだろう。儀式なのだから伝統に則るに越したことはないのだろうけど

大事なのは気持ち、気持ち。

今年一年、家族みんなでこうして笑って過ごせますように♪