つむじ曲がり

髪を切った。
長さを変えず、整える程度なのでイメチェンとはいかないが、それでもやっぱりさっぱりする。
 
私の髪は太い・強い・多いの三重苦。
若い頃からふわっと風を含んだような柔らかいパーマに憧れるが、叶ったことがない。
「デジタルパーマはどんな人でも綺麗なパーマがかかる」と言われ、意気揚々とやってみたけど、3日でほぼストレートに戻った。
なんなら面倒くさい寝癖がつくようになっただけで、メリットは皆無。
さすがに…ということで無料でやり直してくれたけど、翌週にはパーマはどこかへ消えて、後には傷んだ髪と面倒くさい寝癖だけが残った。
 
「パーマなら任せて！」という美容院を見かける度にそわそわとときめきながら挑戦するも、全戦惨敗。
「こんな髪、一度バッキバキにブリーチして、痛めつけた後じゃないとパーマなんて無理だよ！」と鼻で笑われたのを最後に挑戦するのをやめ、「ツヤもコシもあって、子どもの髪みたいに綺麗」と褒めてくれた美容師さんのところでカットだけしてもらうことにした。カットだけでも、意外とイメチェンはできる。
 
それから何度か引っ越して、今通っている美容院の担当さんも私の美容院歴の中で指折りに相性が良い。
いつもカットばかりお願いするのがなんだか申し訳なくて、若い頃の切実なるパーマへの憧れを話したら
「猫っ毛でふわっとした髪に憧れるでしょう？
でも、猫っ毛は猫っ毛で悩みは多いみたいですよ。（この美容師さんも髪圧高めらしい）

パーマも雑誌みたいには…あれはスタイリストあってこそだから、自分で毎日っていうのは大変だし、なかなか…太くて強い髪が良かった！って愚痴もよく聞きますよ」
と笑って教えてくれた。
「クセも悩みもない髪の人なんていません」
 
そういうもんか。
そりゃ、そうか。
 
自分の知らない世界はいいところしか見えないからなぁ
 
ところで、私は日本人形のように黒く一見ストレートヘアなのだが、おでこの付け根につむじ曲がりなつむじがある。
つむじの渦巻きの影響で根元は右向きに生えているのに、髪は左向きに伸びようとするらしい。
 
何度説明されてもわけがわからない。
わからないが、今まで私の髪を切ってくれた美容師さん、ほぼ全員がこのつむじを指摘する。
そして指摘しない人に切ってもらう前髪は伸び始めると変なことになるし、指摘した人でも変なことになることもある。困ったちゃんなのだ。
 
一見するとストレートな私のぱっつん前髪には、人知れずわけのわからないクセがある。
 
なんだか私らしいな、と思う。
 
さて、今回のカットで私には後頭部にもつむじがあることを知った。
「寝癖、こっちだけでしょ？このつむじがね〜」
「え？そんなところにつむじがあるんですか？」
「？ありますよ〜」
「私の髪、おでこから生え始めたのかと思ってました…」
「ふふふ、外側の髪がストレートだから見た目じゃわからないかもしれませんね。」
 
驚いた。長い付き合いでも、まだ私が知らないところがあったのね、髪の毛くん。