まつ毛も抜けた
「もう、好きになった時点で負けなんだよね」
そう溢す友人は彼氏のワガママに振り回されることが誇らしげで、楽しんでいるように見えた。
当時の私には「ふ〜ん」って感じだった。
『私は私のペースを乱すような彼氏ならいらない』
彼氏の為に時間を割いて我慢するなんてまっぴら。
と彼氏いない歴=年齢な女子高生時代、私は模試ばかりで貴重だった週末を趣味の“狛犬採集”に費やしました、とさ。
…さて、そんな昔のことを思い出したのは、息子に目蓋を捲られたからだ。
寝かしつけながら、うっかり寝落ちしてしまった私を起こす為、一歳の息子は手っ取り早く目を開けようとしたらしい。
「イッ⁈⁈イタイイタイ‼︎……おめめはダーメーよ」
目の前に喜び満面の息子の顔。
目を覚ましたくらいで、そんないい顔されちゃ、そりゃダメだわ。母の負けじゃ。完敗じゃ。
お母さん大好きなくせに、お母さんの都合なんてお構いなし。かわゆき暴君。
冒頭の彼女を思い出したついでに、“今ならあの時の友人の気持ちもわかる…”と締めようかと思ったけど、やっぱり違うな。
私のペースを乱して、振り回して、傍若無人にのびの〜びとやっていいのは我が子だけ。
…はぁ〜、痛びっくりした。