くまんち

なんてことない、日々のこと

手に汗握る

「本とか映画になりそうじゃない⁈」と娘が言った。おそらく大抵の人が苦手なゴキ…Gのこと。


昨日、買い物終わりにスーパーの休憩所コーナーでおやつを食べていた。


「お水、とってくるね!」と冷水器から両手に紙コップを持って戻ってくる娘を転けないかと見ていると、ゴミ箱の陰から、カサカサっとG。

コップの水面に注意が集中した状態の娘の進路を横切ろうとしている。
「足元に気をつけて!」と声をかける。


え?と顔を挙げる娘に、焦らず、騒がず、やり過ごすのよ!と目で訴える。

伝われ、テレパシー。


娘は足元を見ると「ヒッ」と顔を引攣らせ、静かにGが自分の足元を横切るのを見送ってテーブルに戻ってきた。


「…デカいね。教えてくれてありがと」
「騒がなかったの、グッジョブよ!」

 

自然と視線はGの動向を追う。
あぁ!楽しくお茶している小学生女子グループのサンダルの下!!
ジッと潜むG。


「あぁぁ、踏まないで〜気づいて〜」と呟く娘。
女の子の足裏がゆっくりと地面に。ササっと走り去るG。


「よかった」
「あんまりジロジロ見てちゃダメよ。あの子たちが嫌な気持ちになるでしょ」
「うん……あ!」


視線につられてそちらを見ると、笑いながら地団駄する女の子たちの足元にG。
「あ、あ、ねぇ…気づかないのかな?危ないよ、ねぇ」オロオロする娘。
「アハハハ」と笑う声に連動してダダダダと高速で振り下ろされる足の間をカササッと躱して華麗にソファ下に潜り込むG。

 

ほぅ、と二人で溜息。

 

「…お母さん、あのね、変だと思うかもしれないけど……今、私、ゴキブリを応援してたよ」

 

うん。お母さんも。