コロッケお祭り騒ぎ
コロッケには楽しいイメージしかない。
あの人のおかげで本物の五木ひろしにも何かしらサプライズを期待しちゃうし、世代じゃないから本物の岩崎宏美はちょっと物足りない…
いや、そうじゃなくて、食べる方のコロッケ。
名前もかわいい。
家族でサクサクはふはふ言いながら競うように大皿つついて食べるのも楽しい。
「今日はコロッケ!」というと
無口な夫も「多めに!」と返す。
「丸めるのはまかせろ!」と娘も腕まくり。
フライパンで玉ねぎを炒める私の後ろでそわそわする息子。一歳過ぎて、この子にとってははじめましてのコロッケ。
玉ねぎとひき肉の甘辛い匂いに、もうそわそわしている。 湯気がもうもうのじゃがいもをボウルで潰し始めると見せて見せてと手を伸ばすので、麺棒を握らせて一緒にトントン。
「わぁ!みて!て!」と湯気とじゃがいもを交互に見ては食べたそうに手を伸ばすチビすけに、ちょっとだけ味見をさせる。
「ふむ〜!」
待て待て、おいしくなるのはココからだ。
玉ねぎとひき肉を潰したじゃがいもと合わせる。
堪らず手を伸ばすチビすけに再び味見を…
「ふむ〜!て!て、て!て!」
もう、ダメ。本気で食べたらなくなっちゃう!
まだまだおいしくなるんだから、いや、本当だってば。お母さんを信じなさい。
違う、違う、一人占めなんかしないってば!
怒らないの!泣かないで。もう一口で最後ね。もうちょっと待ってて。
でも、このままでも十分おいしいのに、焦らして、揚げて、サクサクにしちゃうんだから、コロッケは罪な食べ物ね。
お父さんに高い高いをしてもらいながら、息子は気を紛らせている。
出番が来た、と手を洗った娘がやってきて
「ちょっと味見しようか?」
じゃ、ちょっとだけ。
それを高い高いされながら見てしまった食いしん坊がまた泣き出して、てんやわんや。
揚げる前の小判型のコロッケを息子が指で突き刺してみたり、阻止しようとした娘がパン粉をこぼしたり、とても写真を撮る間もないまま、どうにかこうにかできた怒涛のコロッケ。
みんなでおいしくいただきました。
(チビすけは結局衣なしコロッケ。ごめんね、このサクサクは2歳から)
もう少し落ち着いてコロッケを作れるようになった時には、小さく丸めたコロッケにおへそを作って、りんごコロッケを作ってみたいな。
幼い頃にお母さまに作ってもらったコロッケの思い出をネットで読んだ時、胸がきゅぅと温かくなった。
小さく丸めて、きつね色に揚がったコロッケにぷすりと刺された南天の葉…
文章からお母さまの笑顔も、お母さんの手の中でりんごに変わるコロッケを見つめる小さな女の子のキラキラとした瞳も目に浮かぶようだった。
あぁ、今日もコロッケは日本の食卓を明るくしましたよ♪