くまんち

なんてことない、日々のこと

台風前夜

台風が来る。
子どもの頃は大きければ大きいほど、不謹慎ながらワクワクした。
学校はお休みになる!停電になるかも⁉︎

非日常性が高まれば高まるほど、何か面白いことが起きる気がした。雨が横なぐりに吹き飛んでいく様子も、窓を開けようとすると「ビョオォォ〜」と不気味に鳴き声のような音を立てて風が吹き込むのも、青いゴミバケツの蓋がゴロンゴロンと転がっていくのも、それはもう飽きもせずいつまででも見ていられるくらい好きだった。
停電になると、更にドラマチック。懐中電灯を取り合い、弟達と家の中で冒険の旅に出た。ジャングル。或いは宇宙。海底都市…
とても口には出せないけど、大きい台風ほど「直撃、来い!!」と願っていた。

『洪水になったら湯船に乗って、フライパンで漕ぎ出でるぞ!いざ、無人島へ〜』なんて空想ばかりしていたおバカさんだった。おバカさんだったのだ。

 

大人になったら、ただただひたすらに直撃を免れたい。直撃するにしてもできるだけ被害が出ないように。怖くて堪らない。

母の存在に守られていたんだな…
安心していたからこその、冒険だったんだ。

 

今度の台風が、できるだけ大きな被害を出しませんように。
みなさま、お気をつけください。