かわいいは正義
マスクを縫った。
来週、胃の手術のために島を離れ、大きな病院に入院するという祖母のために。
「内視鏡手術だって。ごく初期だから心配はいらんとよ。それより、節句だからよもぎのお餅とかんころ餅(長崎県五島の郷土菓子)撞いたけん、送るよ」
そんな祖母のために私にできることは少なくて、あれこれ考えた末にマスクを縫うことにしたのだ。
せめて、マスクくらい。
できることがあってよかった。
「元気でいてね」
いつまでも、笑っていてね。
ただそれだけを祈って、針を刺す。
刺繍を見て、ほんのちょっと祖母が笑ってくれたら…
ただそれだけを祈って、針を刺した。
ベビードレスの余りの白いWガーゼ、こんなことならもっと余らせとけばよかったなぁ。よだれかけの余りガーゼばかりだからなんだかカラフル。
娘の描いた小鳥をかわいいって笑ってくれるかしら?
かわいいって心がぴょんとはねたら、
きっと大抵の心配事は吹き飛ぶ …はず。
そう願う。