くまんち

なんてことない、日々のこと

わくわくとドキドキ

きっと、5歳男児は「男子」の核なのだ。

なんだか、そんな気がしている。

 

夏休みに入って、雨の日以外は毎日セミ捕りに行っている。初日はセミの抜け殻を捕まえるwのにも、ふぅふぅと命からがらのていだった息子だが(壊れないようにもぎとる力加減が難しく、怖いらしい)回を重ねるごとに、網でセミを採れるようになってきた。

日が上りきる前の午前中と、落ち始めた夕方。

右手に虫取り網、左手に虫かごを握りしめ、帽子が染まるほどの汗をかきかき、公園へ走る彼は絵にかいたような虫取り少年だ。

うちの近所の公園にはやたらセミに好かれる木がある。息子はこれを「セミのレストラン」と呼んでいる。花も咲かないし何の木だかはわからないけれど、とにかくいつ行っても10匹くらいクマゼミが止まっている。

どのセミが捕まえやすいか…セミのレストランにいるセミたちを息子は真剣な眼差しで見極める。正直、どれでもいい。大人しいし、低いところにいるので手でむぎっと採れるレベルだ。

「…これとかどう?網が枝に引っかかることもないし」

「いや…ダメだ。隣にカメムシがいる。おならプープーされる!」

一度、カメムシに虫取り網をカメムシ臭くされたものだから慎重だ。

「じゃ、こっちは?」

「うん…う〜ん、おしっこかけられそう……ふぅ!難しいな〜」

息を詰め、汗っかきかき。うちのスナイパーは慎重だ。

 

そうしていると、毎日のように

「おい、こっち!」

と手招きする人が現れる。知らないおじさんだ。

「網持って来て!ほら!」

戸惑う息子を苦笑いで促し、一緒におじさんの方へ。

「網、貸して!」

おじさんは息子から網を受け取ると、慣れた手つきでサッと振る。

ジ…   ジャージャージャー!!

ぶんぶん暴れる網を息子に返す。

「わぁーーーわ、わ、あ!あ…」

息子がおろおろしながら「ありがとーございます!」と受け取り、わたわたしながら虫かごにセミを入れるのを見届けると、おじさんは何も言わずに去っていく。

これが、ほぼ毎日。

そして毎日違うおじさん、おじいさんがしてくれるのだ。

 

私はそれが面白くてたまらない。

 

息子が真剣に木を見上げていると、どこからともなくレジェンド虫取り少年が現れる。

(レジェンド☆キタ!!と心の中で盛り上がる私)

はじめの内は『虫を採ってくれている』と思っていた。しかし、連日いろんなおじさんが「網、貸して!」と言うのを見ていたら…もちろん、幼い彼と頼りなさげな母親を見兼ねて採ってくれているのだろうけれど、どうもおじさんたちの「セミを採りたい」気持ちがくすぐられているように見えるのだ。

それは、子どもが二重跳びの練習をしている時にふと『私、今でも跳べるのかしら?』と思って縄跳びを借りる時の私!この心境に近いのではないか。

 

セミ、採りたいなぁ…採れるかな?

網を構えてセミを見上げる息子は、わくわくもドキドキもむき出しだ。

そんなむき出しの心が、おじさんたちの心の核にある「男子」を刺激するんじゃないかって…思うんだけど、どうなんでしょう??

 

私の仮説が正しければ、来年の夏はレジェンド虫取り少年たちに声をかけてもらうことは少なくなるだろうと思う。息子の虫取り技術如何ではなく、彼の「男子」心が彼なりの経験や思慮から今のようにむき出しではなくなるだろうから。「男子」むき出しなのは4〜5歳なんじゃないかな。

娘も4〜5歳の頃は突然店内で「ありの〜ままの〜姿見せるのよ〜♪」と歌い出す天下無敵のプリンセスでアイドルだったもの(いや〜当時のアナ雪ブームはすごかったのです。プレイルームやお店のBGMで前奏が聞こえ始めると一人、また一人とあちこちで小さなプリンセスが歌い始めて…最後はプリンセス大合唱。それが一度じゃないんだもん…すごかった!)

 

この夏、できるだけわくわくするようなことをさせてあげたいと思う。きっと今だけだろう、むき出しの心がわくわくドキドキしている様子をいっぱい見たい。

 

仮説だのなんだの大仰に書きながら、来年も知らないおじさんたちが「網持って来て!」って手招きするなら…それはそれで面白い。ふふ。

 

さぁ!君もレジェンド虫取り少年になれるように、息子よ、日々精進するのじゃ!