くまんち

なんてことない、日々のこと

自慢の息子

昨日久々に大失敗してしまった。

息子の参観日をすっかり忘れていたのだ。

気になっていた窓のくすみをきれいにしようと磨いていたところ、ママ友からLINEをもらい
「今日、参観ですけど来られない感じでしたか?」
と聞かれてやっと気づくという、本当に芯からすっかりさっぱり忘れていたのだ。

「忘れてました!ありがとう!!」と返信して慌てて準備。
ネーム札を握りしめ、出席シートに体温やら体調やらを走り書き。自分の名前欄に息子の名前を書きかけたものをぐちゃっと黒く塗りつぶして横に自分の名前を書いた。みっともないけれどそれどころではない。
既に授業が始まって8分経っている。

信号に止まるたびやきもきしながら、急いで幼稚園の事務室に駆け込む。
「すみません、参観なの、忘れてて!」
「ぁ…!もうすぐ終わっちゃうかもしれないけど…どうぞ!今日はすみれ組さん、きく組の教室です!」
お礼を早々に教室へ向かう。チラッと見た事務室の時計によると既に始まって15分…
スリッパなんて履いていられない。ぺたぺたと廊下を走る。
教室に入ると、ちょうど演奏の発表が終わり、みんなで輪になって、一年の振り返りをしようとしているところだった。子どもたちの後ろに保護者が並んでいる。
息子は教室の入り口の側で、息子の後ろには先生が立っていて「それでは、お子さんと一緒にこの一年のことを…」と話していた。
先生にお辞儀して、そっと息子の後ろに立つと息子よりも先に息子の隣に座っていたお友だちが「おそすぎだろ!」とつっこんだ。
息子はにこにこしながら振り返り
「お母さん、忘れてた?」
「忘れてた!本当にごめんね。ごめんね」
「ふふ、ぼくも忘れてたんだ。びっくりしたねー」
椅子越しにそっと息子を抱きしめる。

心臓がバクバクしている。

息子が私の腕を握り返す。
どんなに不安だっただろう。
情けない。
でも、それ以上に、心細い思いをしたはずなのに「ぼくも忘れてたんだ」と笑う息子の懐の深さに、こんなにも成長していたのかと感動してしまった。
この一年の成長なんかを発表する場だったので、自分の番が来た時に思わずこの感動を口走りそうになるのを飲み込んで「先生とすみれ組のお友だちみんなのおかげで、毎日楽しそうでした。ありがとうございました」と無難オブ無難なことを言うにとどめた。
感動している最中は言葉がうまくまとまらない。

参観が終わった後、LINEをくれたママ友が自分の子の側で発表していたから…と発表の動画を送ってくれた。
4つある動画の最初から順に見ていく。
息子は私が来ていないことに少し不安そうな顔をして首を伸ばして廊下を見ながら歌っていた。
2つ目の動画では、やれやれというように肩をすくめて、少し苦笑いしながら2曲目を歌っている。
3つ目の動画では、やっぱり首を伸ばして廊下を確認したあと、暗い表情で少し投げやりに、でもきちんとハーモニカを吹いていた。
4つ目の動画では真顔でハーモニカを吹きながら…吹き終えた後、ほんのちょっと目元をこする息子の姿があった。
私はこの日のために、家でもハーモニカの練習をしていた息子を知っている。
本当に、なんてひどい失敗をしてしまったのだろう。
悲しくて泣きたくなるのを堪えて、きちんと演奏した息子はなんて立派なんだろう。
こんなにがっかりしていたのに、一言も私を責めることなく「ぼくも忘れてたんだ」と笑ったのか、この子は。

我が子を誇らしく思う。

 

情けない、と凹む心が膨らむくらい息子の成長を感じた一日だった。