くまんち

なんてことない、日々のこと

海の日だ。


海の日なので、海の思い出を書いてみる。

 

私がまだ泳げず、浮き輪でぷかぷか遊んでいたような幼い頃。

私は、今思うと離岸流に乗って、浮き輪ぷかぷかと能天気に沖まで流されてしまった。


当時の私は海岸からどんどん離れていくことを自分のバタ足のすごさだと信じていたから意気揚々としていたと思う。少しも怖くなかった。
忘れもしない。

『これだけ遠くへ来たんだから、海の中は絵本のようにステキなお魚の世界が広がってるに違いない!』

とワクワクした気持ちで私は浮き輪に手を引っ掛けて、体を海に沈めてみた。


そぉっと目を開くと砂と岩場だけしか見えない。

ただ、足はつかない。


お魚パラダイスでないことにがっかりしつつも、足がつかないほど深いところまで来れたことが誇らしかった。お魚パラダイスまでもう少しのところまで来ている、とワクワクしたままの気持ちで、浮き輪に這い上がろうとして、手が滑ったのだろう、波に浮き輪を攫われた。

 

意気揚々と沖まで出て、自信満々にお魚パラダイスへ向かっていた私だけど、前述の通り泳げない。

当然のように溺れるわけだが、幸か不幸か、自信満々なので恐怖心はなかった。


浮き輪が頭の上から遠くへ流されたが、水面越しに青空が見えて、キレイだなぁと思った。


泳げないけど、岩場まで沈んで思いきりジャンプしたらイルカみたいに空を飛べるだろうと、妙に落ち着いていた。

 

そんな余裕のある思い出しか残っていないところをみると、うちのうっかり者の父も割と早い内に私が流されたことに気づき、助けに来てくれたらしい。


記憶にはなかったが、溺れる私に「しがみついちゃダメだよ」というと素直に手を離したそうだ。
「素直に聞いてくれてラッキーだった、抱きつかれた時は助けに行った人が溺れるというのがよくわかった」と私が親になった頃に話してくれた父も、イルカみたいに飛び上がるつもりだったと言うと呆れていた。

 

私も含め、世の中のお父さん、お母さん。
海では絶対に子供から目を離さないようにしましょう。


私が助かったのは、父が早めに気づいたからに他ならないがそもそもの目を離すなよ、と。

たまたま当時の私が呆れるほどメルヘンで能天気でパニックにならなかったからよかったものの!
(いや、メルヘンちゃんだったから危険を危険と思わずやっちまったのだと思うと、我ながら残念な子だけども)

 

 

実を言うと、水面越しに空を見上げた思い出は、私にとってはどちらかというと良い思い出でもある。

だけど、あのどんなに手足を動かしても届かない水面を自分の子供たちには絶対に見せたくない。