くまんち

なんてことない、日々のこと

砂嵐の夢

子どもの頃、高熱を出すと必ず見る夢があった。

砂嵐の夢。
砂嵐とは、アナログテレビ時代、電波が受信できない時に見られた、アレ。

シチュエーションは様々だから一見すると普段の夢と変わらない。
それが唐突に目の前の人の顔が渦を巻いて中央に吸い込まれるように小さくなり、声がスローモーションのように間延びし始める。
この時「あぁ、これは砂嵐の夢だ」と気づくが、なかなか自力で目を覚ますことができない。
自分の中の時間が高速化し、周りの時間がひどくゆっくりに見える。かと思うと、自分が追いつけないほど周囲の時間が高速で流れ始める。
(この時の感覚を連想するから、遊園地のコーヒーカップはジェットコースターよりも怖くて乗れない)
耳鳴りがして、足元がぐらつき見下ろすと地面が放送終了のテレビのような砂嵐に渦巻くように飲まれ
ていく。

ザー……

大抵そこで目が覚める。怖い夢。

目を覚ました後も、しばらくは自分の中の時間と周囲に流れる時間の速さにズレを感じて動けない。

いつの間にか熱を出しても砂嵐の夢を見ることはなくなり、すっかり忘れていたが、数年前の『世にも奇妙な物語』「さっきよりもいい人」を見た時に驚いた。
主人公の時間が巻き戻される時の描写が砂嵐の夢とあまりにもそっくりだった。
もしかしたら、この映像を作った人は私と同じような夢を見ていたかもしれない…


こんなことを書いてみたのは、どうやら娘は高熱に伴う悪夢を見ないらしいから。
先日の風邪で40度もの熱を出した娘。まだ食は細いものの、今週からは元気に登校している。
寝る前にふと「熱がひどい間、怖い夢は見なかった?」と聞いてみたところ、全然覚えていないと。

安堵と共に、ほんの少し「私、変な子だった??」という…うまく表現できない感情がさざめいている。

熱に浮かされるという言葉があるくらいだから大なり小なり子どもはみんな砂嵐のような悪夢を見るのかと思っていた。

うまく表現できないけど、漫画だと今の私の背後には「ガビ〜ン」とか「ズモモ〜ン」と書いてあると思う。