くまんち

なんてことない、日々のこと

小学生女子

娘が幼い頃

彼女は流れる雲や、すずめの羽ばたき、自分の影や木の葉の隙間から差す光のゆらぎ…大人が見落としがちな綺麗なものを見つけては「わぁ」と指差し笑っていた。
言葉が話せない分、全身で感動を知らせてくれる娘を見ながら、私は『この子の目に映るものが、綺麗なものだけであればいいのに』と叶いようもない願いを思わずにいられなかった。

 

そんな娘ももう小三。

昨日、友達が仲間外れにされて泣いていたと言って帰ってきた。

「◯ちゃんとみんなで遊ぶ約束をしてたらね、△ちゃんが私も行っていい?って言ってたの。そしたら、◯ちゃんのお姉ちゃんが△ちゃんが来るのは嫌だって言ったんだって」
「なんでお姉ちゃん、嫌だって言ったの?」
「なんかよくわかんない。あんまりたくさん遊びに来ると迷惑、とか…」
「公園で遊べばいいじゃない」
「なんかお姉ちゃん、△ちゃんが嫌いなんだって。△ちゃん、帰り道、私と二人になったら泣き出しちゃって…泣いたこと、誰にも言わないでって言われたんだけど、でも、◯ちゃんのお姉ちゃんに言いたい」

◯ちゃんと娘は大の仲良し。

△ちゃんも習い事の都合で遊べないことも多いけど、仲良し。
娘はなんとなく板ばさみになった気持ちでいた。

「言わないでって言うなら、勝手に言わない方がいいよ」
「うん…どうしたらいいんだろう。難しい立場だ」と娘は思案顔。
「心配なら◯ちゃんの家に遊びに行く前に、△ちゃんの家に寄って△ちゃんにどうしてほしいか聞いておいで。もしも何もしないでって言われたら今日は余計なことはしないこと」
「わかった!」

 

帰ってきた娘と話していると言いにくそうにお友達の家で起きたことを話してくれた。
ゲームをしたり、ふざけっこしたりいつも通り遊んでいる中で「これ、△ちゃんね!」と人形を乱雑に扱ったり「△ちゃん、嫌なとこあるよね〜」という話になったんだそうだ。
娘も振られて「まぁ、ちょっと嫌なとこある」と答えた、と。

「それは陰口よ。嫌なところを本人にじゃなくて陰でコソコソ盛り上がるなんて卑怯者のすることよ!」

と、キツく叱ってしまった。


自分自身の小学生時代を思い出していた。

私が「困ってるんだ、やめてほしい」と友達に愚痴をこぼしたことをきっかけに仲間外れが始まったこと。
不満は直接伝えるべきだったと後悔しても、私の放った不満を火種に周りがやんやと盛り上がり、自分の力ではどうしようもなくなっていくさまが怖かったこと。
担任のおかげで1カ月足らずで鎮火したものの、仲間外れにされた子にとってはそんなことも私の言い訳も関係ないということ。

洗いざらい話して「あなたにはこんな経験をしてほしくない」と結んだ。

「どうしたらいいんだろう」と半泣きの娘に
「今まで通り、◯ちゃんとも△ちゃんとも仲良くしなさい。そして、これからは陰口には参加しないこと」と話したけれど、実際問題、どうするのが正しいのか私にもわからない。

 

今朝、娘は「怖い夢を見た」と言った。
「友達と遊べなくなる夢」だって。

あぁ、言い過ぎたかもしれない…
モヤモヤを抱えて帰ってきたのに、どうしようと悩み、胸を痛めて帰ってきたのに…きつく叱ってごめんね。あなたは私じゃないのに。


娘も女子の嫌な『あるある』に触れる年頃になったんだ。難しい年頃よね。難しい。

 

娘よ、どうかこの暗い影に飲まれず、流されずに生きておくれ。
あなたの目に映るものを綺麗なものだけにしてあげたいけど、お母さんにはできないから。

あなたの優しさがあなたの心を強くしてくれますように。