くまんち

なんてことない、日々のこと

彷徨えるアラフォー

夕方7時。娘の習い事が終わるのを待っていた。

いつもなら車でゆっくり本を読むところだが、クーラーをつけっぱなしではガソリンがもったいないし、日が落ちたとはいえ、つけなければ蒸し暑い。

しかたなしに、ふらりと近くを散歩することにした。

 

数年前まで住んでいた地域だがこの数年でだいぶ様変わりした。古い家が取り壊され、新しい家が建ち並ぶ。田んぼも新しく分譲地になったらしい。夏風にシャラシャラ鳴る稲穂、好きだったな…

土地の世代交代を感じながら、何食わぬ顔で外構をチェック。とても良い趣味とは言えないけれど、他所様のお庭を見るのが好きでして…植栽(特に気になるのはシンボルツリーの下植え)駐車場のデザイン、配置。砂利の位置。こだわりポイントはどこかな?なんて思いながらふらふらと歩く。

夕方の散歩はこの辺りに住んでいますよ〜という顔で歩くのがポイントだ。不審者ではありません、家に帰るとこですよ〜という顔で歩く。もしかしたら、盗っ人もこんな顔して歩くのかしら?

民家に入り込み過ぎないように気をつける。

あぁ、古い長屋が取り壊されて、おしゃれな家が2軒も…なんて思いながら曲がったところで、買い物袋をぶら下げて水路の脇を歩く女性の背中を見つけた。

おっと。

買い物袋をカサカサ鳴らしながら、水路に沿って家と家の間を歩いていく。

なんでまたこんな道を…?

人のことを言えないけれど、もっと明るい、広い道を通ったらいいのに。どこかへの近道だとしたら、彼女の家か。

彼女の後ろをついて歩くのはまずい。これでは不審者になってしまう。

踵を返して広い道へと戻る。

 

思ったよりゆっくりやってるな〜娘。お母さん、もう時間を潰せそうにないよ〜頼むよ〜

 

広い道に出て、娘と待ち合わせる公園の方に向かって歩き出し、しばらくすると、正面から買い物袋をカサカサぶら下げて歩く女性がやって来た。

 

 

先程は背中しか見なかったけれど、彼女だ。紺のTシャツに白っぽいロングスカート。無造作に束ねた髪。背格好も…別にじっくり眺めたわけではないけれど、ほんの1、2分前のことだ。間違いない。

少し目線を逸らし、知らぬ顔ですれ違う。

 

さて、文章の上なら怪談チックにもなるところだけど。

水路を歩く彼女の背中を見送って、私が広い通りに戻り、再び彼女と出くわすのは地理的に不可能ではない。

彼女は北へ向かって水路沿いを歩いていたが、私が引き返したのとそう変わらないタイミングで右手に曲がれば、私が向かっていた公園のフェンスとアパートの裏手のフェンスに挟まれた細い道があるのだ。大人が一人通るのがやっとな細い道。昔、「探検、探検!」と小学生だった娘に手を引かれ通ったことがある。

普通の人なら通らないけれど、もしあの道を通ったなら…というか、私たちがすれ違ったタイミングを考えても、あの細い道を通ったとしか考えられない。

そうすると、公園の周りを四角く歩いていることになるけれど…?

 

えぇーー…どこに向かっているの?彼女!!?

 

年恰好も近い私たち。たぶん、彼女も私と同じで子どもの習い事が終わるまでの暇を潰すために『この辺りに住んでますよ〜』という顔で歩いていたのだろう。

 

私以外にこんなことをする変人がいたとは…

 

もし、彼女も不自然に引き返した私の存在に気づいていたとしたら同じように苦笑いしているに違いない。

 

そこまで妄想して、勝手に『仲間!お疲れ』と思った私でした。

 

真相は幽霊でした!ってオチだったらびっくりしちゃうけどね。