くまんち

なんてことない、日々のこと

はじめてのお客さま

今日は新居に娘の友達が来ている。
このお家ができて初めての「お客さま」だ。
 
まだリビングにはソファもなくて、テレビの前はガラ〜ン。
娘の部屋に至ってはおもちゃと本棚以外はない、というお粗末な状態だけれど。
 
今朝から娘の胸は喜びに弾んで…体までぴょんこぴょんこ跳ねている。
 
「ん〜このキッチンのダンボールがね〜」
 
へぃ。犯人はお母さんでやんす。すんません。
 
「ま、いっか。キッチンには入らないもんね!あとは〜…ねーお母さん、コレ、ちょっと変かな?」
 
リビングの小さなテーブルに息子のお昼寝用膝掛けがかけられていた。
 
「テーブルクロス。かわいくない?やっぱ変??」
 
「変」
 
「だよね〜ポ〜イ!」
 
くるくると部屋中を跳ねるようにファブリーズして回る娘。
 
二つ結びでおめかししたうさぎさんがぴょんこぴょんことお茶会の準備をしている姿を見るのが嬉しい。
 
車で迎えに行くと緊張と期待でほっぺを染めた女の子達がそれぞれおしゃれして待っていた。
ピンクに水色、春色の女の子達。
 
「この服、実は今朝、買ってきたの」
「え〜、かわいい!」
 
後部座席でひそひそとはしゃぐレディたちを乗せて、私は執事にでもなった気分。
 
「入って〜どうぞ、どうぞ〜」
 
「おじゃまします」「おじゃまします」
靴をきちんと並べて、そわそわと入っていくレディたち。
 
ゲームをしながらワイワイはしゃぐ彼女たちを尻目に洗い物をしたり、空気に徹する優秀な執事はそっと娘が準備したパイを焼き始める。
 
すると、レディたちの一人がぽつりと
「これが三人で遊ぶ最後か…」と呟いた。
 
あらあら…
 
「最後やないし!」「また集まろうよ!!」
 
「毎日じゃなくても遊べるよね?」
 
「遊べるよ!遊ぼうよ!ね!ね!」
 
あとは何もなかったかのようにゲラゲラ笑うレディたちにほっと胸を撫で下ろす。
 
転校したことを寂しいと思ってくれる友達ができたこと。
転校してからも遊ぼうと言い合える関係を築けたこと。
 
母はそれが何より嬉しい。
 
あなたは大丈夫。きっとどこにいても、あなたを好きになってくれる人に出会える、と祈るように信じることにする。
 
あ、ごめん。
お母さん、テンパっちゃって、オーブンの段、間違えちゃった。やや焦げチョコパイ。
 

「コレ、私が作ったの!みんな食べてよ!」
 
「嘘、お母さんが焼いてたじゃん!」
 
「焼くまでの段階は私が作ったんだってば!!」
 
花が咲くように、女の子たちの笑い声が聞こえる。
緊張もほぐれて、レディにあるまじき粗雑な言葉も飛び交っておりますが…
 
私は、なんだか幸せな気持ち。