くまんち

なんてことない、日々のこと

一撃ノックアウト

膝枕し、息子の歯を磨く。
「いいね〜大きいお口。バイキンさん、いなくなるよ〜」
 
じぃっと私の顔を見上げながら、息子がそっと私の頬を撫でる。
 
シャカシャカシャカ…
な〜でな〜で…
 
「なぁに?」
「ん〜」
「はい、歯磨きおしまい」
「おかあさん、ぼく、おかあさん、ダイチなんだ」
「ダイチ?…あぁ、おかあさんもちび太が大事…
「おかあさん、ダ〜イチ!」
ぎゅ。
 
「お〜い、ちび太、お父さんのことはダイスキ?」
 
あぁ、大好きって言ってたのか。
 
「ううん、おとうさんはね、ダイチない。スキよ」
「えぇ〜大好きじゃないのか〜」
「おとうさんはおねえちゃんがダイチだって。ぼくはおかあさん、ダイチだから」
 
「じゃあ、ちび太!お姉ちゃんは?お姉ちゃんのことは?」
「おねえちゃん、ダ〜イチないよ。ぜ〜んぜん!」
息子は娘に背中を向けて、ぜ〜んぜん!と言いながらニヤリ。
「なんでよーーー!!」と嘆くお姉ちゃんの声を背中に、足をパタパタ嬉しそうに聞いている。
 
「は〜い、うそつき発見で〜す!お姉ちゃん大好きマンはココで〜す」と両手を捕まえてバンザイの格好で娘の方へ振り向かせると、きゃあ〜と走って逃げた。
 
 
あぁ、びっくりした。
あんなにまっすぐ、目を見て「大好き」って言われたらドキっとするもんだな。
ちびすけだろうと、まっすぐな言葉は何よりも強く突き刺さる。
 
やられた。
 
心臓に突き刺さった「大好き」はじんわり、ず〜っと温かい。