くまんち

なんてことない、日々のこと

運動会

幼稚園の運動会であった。

少し肌寒いけれど良いお天気。

お母さんっ子の息子だが、今年の親子競技は「お父さんとがいい!」と言う。聞けば、どうやら最後に「だいすき〜」とハグするらしく

「みんなの前でお母さんとぎゅってするのはちょっと恥ずかしいから、お父さんがいい!」と言うのだ。

おぉ〜!?もう、そんなことを言うお年頃なのかい??

「お父さん、親子競技、一緒にしてよ?絶対だよ!約束して!」

「もちろんだよ!だいすき〜ってぎゅうすればいいんだな?任せとけ!ちび太はお父さん、大好きだもんな〜」

お父さんも大好きだからな〜とからかうように上機嫌な夫と、何がなんでもお母さんと親子競技をすることは避けたい真剣な息子。

実は、夫。幼稚園の親子競技は初めてなのだ。

上の娘の時も、息子も「お母さんとがいい!」と言っていたので、これまでずっと私が親子競技に参加していた。

照れ屋で外ではクールなおじさんなので息子と一緒に『ジャングルの探検隊ごっこ』…できるのかしら?一抹の不安を感じつつ…

当日。

かけっこ、玉入れ、ダンス。年中さんにもなると少し競技らしくなってくる。

かけっこはビリだったけど、本人が一生懸命練習した通りの走りっぷりだった。他のお母さんに「ちび太くんのスタートの構え!かっこよすぎません!?」と声を掛けられたその構えはほんのり亀仙流。夏休みにドラゴンボール(悟空が筋斗雲にのってる頃)にハマった息子は「ぼく、悟空みたいになりたい!」と練習していたのだ。もちろん、構えだけでなく走り方も。足を上げるだの、できるだけ前に出す!だのお父さんのアドバイスを一生懸命に聞いて、忠実に守ろうと頭がいっぱいになっている走り方だった。ビリだけど、頑張ったので良しだ!

 

さて、いよいよ親子競技。

「保護者の皆さまは、お子さまの左側にお並びください」と園のアナウンスが響く。息子は園庭に並び、少し心配そうに父親の行方を探している。夫が隣に来ると、飛び跳ねて抱きついた。夫は飛びついた息子を嬉しそうに抱きしめて、手を繋ぐ。

娘が年長さんだったとき、幼稚園最後の運動会くらい、と思い「今年はお父さんとしたら?」と諭したのだ。嫌だとごねる娘の横で「いいじゃん、あなたがすれば」と知らん顔で言っていた夫。

本当のところ、『人前で踊ったりするのが嫌なんだろうな』とその時の私は思ったのだ。なんなら今、楽しそうに息子の手を握る姿を見るまでそう思っていた。でも、本当は娘の希望を何よりに考えただけだったのかもしれない。いや、夫の性格的に人前で…というのを嫌った説が有力だ。でも、もしかしたら

 

夫に似て、ちょっと照れ屋な息子は夫と手を繋いで安心したようにこの日一番の笑顔で踊っていた。

夫も息子も、なにやら終始嬉しそう。

「これで探検はおしまいです。だいすきのぎゅーで終わりましょう」とアナウンスがあった。音楽に合わせて、親子でぎゅう!

夫にめりこむ息子と息子を抱き締める夫、どちらの顔も見えないへっぽこな写真しか撮れなかったけれど、まぁいいや。些細なことよ。

 

帰り道、首に金メダルを下げて「お母さんと!」と言い張る息子と私、手を繋いで歩いた。夫は何も言わず、私たちの前を歩く。振り向きもしないのでずんずん離れていく背中。

まったく、子ども思いなんだか自分勝手なんだか…

 

まぁ、いいか。