くまんち

なんてことない、日々のこと

にんじんケーキ🥕

にんじんケーキは母の味。
 
といっても、母が焼いてくれたのは2回だけ。
そのうち1回はあんまりおいしくなかった。生焼けだった気がする。
それでも、母の味。
 
初めて母のにんじんケーキを食べたのは幼稚園のお友達が初めて家に遊びに来た日。
 
初めて作るケーキを、初めて来るお客さまに振る舞っちゃうところが母らしい。
しかも、母は特別お菓子作りが上手なわけではないのだ。クッキーもよく焦がしていた。チャレンジャー
 
ともかく、家に初めて幼稚園のお友達が遊びに来た日。
自分の家にお友達がいることが嬉しくて、嬉しくて。
夢中で遊んでいるうちに、お家の中に甘い焼き菓子の匂いがぷ〜ん…
 
「おやつだよ〜」
 
焼きたてのパウンドケーキを切りながら、母がイタズラっぽく笑う。
「これね、何でできていると思う?
にんじんだよ!にんじんケーキ!」
 
え〜⁈
 
私も友達もみんなで大合唱。
(あぁ、本当にこの時にんじん嫌いの子がいなくてよかったよね、お母さん。大人になってからしみじみ思うよ。母さん、あんたはチャレンジャーだよ)
 
にんじんだって!ケーキなのに?甘いかな?
おいしいの?
「さあ?食べてみなきゃわからない」
 
ええー⁈⁈
 
みんなできゃあきゃあ、ワクワクしながら食べた。
ほんのり甘くて、さっくり、ふっくら。
みんな、ほっぺをにんじん色にしてうさぎみたいにモグモグ食べた。
 
帰る時、みんなが口々ににんじんケーキにびっくりしたこと、おいしかったことを話していた。
 
「くまりちゃんのお母さん、すごい!」
 
私はもう、嬉しくて嬉しくて胸がパンパンに膨らんでいた。
 
だから、にんじんケーキは母の味。
 
あの日、母は奇跡的に魔法使いだったのだと思う。せがんで作ってもらった2度目のにんじんケーキは残念ケーキだったから。

それから二度と作ってくれていない。

理由は簡単。
私は子どもたちのために時々焼くからわかる。
にんじんケーキはにんじんをすりおろすのがなかなか手間なのだ。手が疲れる。弟妹の世話でてんやわんやの母にはなかなか荷が重いケーキだったろう。

それでも、子どもの頃の嬉しい気持ちに駆られて時々焼いてしまう。


残念ながら、私のレシピは10年前にネットで見つけた「20年前から作り続けている」と紹介されたにんじんケーキ。きっと同じ味だと思う。おいしいもん!

そろそろ娘が「今日のおやつ、なぁに?」と帰ってくる。

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家の中を焼きたてケーキの匂いで満たして待っている。